「パラレルキャリア」という言葉を聞いたことがありますか？
本業以外に仕事を掛け持ちし、第二のキャリアを築く働き方を指します。副収入のために働く副業と区別し、「複業」と表現する人もいます。
平均寿命が延びたことや終身雇用に対する意識の変化、出産後も働き続けたい女性の増加といったさまざまな社会的要因により、日本でもパラレルキャリアが注目されています。
子育てなどでキャリアが中断されがちな女性でも、会社に頼らないキャリアづくりが可能なパラレルキャリアについてご紹介します。

パラレルキャリア（英語：parallel career）とは、オーストリア人の経営学者、ピーター・ドラッカー氏が提唱した概念です。
パラレルキャリアについて、ドラッカー氏は著書『明日を支配するもの』の中で、組織を離れた後の「第二の人生」のために「第二の仕事、すなわちもう一つの世界をもつこと」と表現しています。
長寿化した社会においてリタイア後の人生を豊かに過ごすために、本業のほかにも自分自身に価値を見出せる世界を持つべきという考え方です。
英語の「parallel」と言う言葉には、「平行」「並列」の意味があり、複数のキャリアを同時進行で身に付けることと考えて良いでしょう。
副業との違いは、副収入を得るだけでなく、スキルアップや自己啓発など自分自身の将来の糧となるような活動全般を指す点です。
そのため、パラレルキャリアには収入の発生しないボランティアなども含まれます。
パラレルキャリアを持つことで、一つの組織に頼らないキャリアづくりが可能となります。

パラレルキャリアは新しい概念ですが、実はパラレルキャリアのように働く人たちは昔からいました。
会社員として働きながら小説家を目指してデビューした作家や、デビュー後も兼業する作家は珍しくありません。
地元企業の経営者などは、地域の少年野球チームを指導する、地元のボランティア団体で活動するなど、会社経営とは違った形で社会貢献することを好むこともあります。
また、公務員として働きながら各地のマラソン大会で名を馳せた川内優輝選手の活躍は、パラレルキャリア的と言えるでしょう。
現在では副業解禁の影響で、会社員もパラレルキャリアに挑戦しやすくなっています。
サラリーマンやOLの中にも、資格を活かして自宅サロンや勉強会を開催する、飲食店を間借りして休日だけランチを提供する、などさまざまなパラレルキャリアに挑戦する人がいます。
ダンスや音楽などのように、本業とは違ったスキルを生かした趣味の活動がパラレルキャリアにつながることもあります。

パラレルキャリアを持つことは、自分の夢をかなえて自己実現に近づけるメリットがあります。
組織で動く仕事では個人的にやりたい仕事を実現するのは難しいため、やりがいを感じられず悩む方も多いでしょう。
パラレルキャリアでの思い切ったチャレンジは、悔いのない豊かな人生をもたらします。
パラレルキャリアは会社で得られない経験・人脈が広がり、本業にも良い影響を与えることも知られています。
子育て期間中、会社でのキャリアが中断されることに不安を感じるなら、パラレルキャリアで会社以外の世界を広げてみましょう。
これまでなんとなくやってきた体調管理やスケジュールの管理について意識が変わり、生産性を上げるきっかけになるかもしれません。一方、複数の仕事を持つことでタイムマネジメントの難しさに直面する人もいます。

収入が伴うとは限らないパラレルキャリアの原動力は、自分の「夢」や「やりがい」です。
パラレルキャリアを始めたいと思ったら、将来のなりたい自分を想像して、そこへ至る道筋の最初の一歩を踏み出してみましょう。
本業が忙しくて、ほかの仕事に時間が取れないという人でも、資格の勉強を始める、異業種交流会に参加してみるなど、自分のペースでできることで大丈夫です。
子育てや親戚付き合い、地域の自治会の仕事などで忙しく、これ以上自分のための仕事を増やせないというなら、視点を変えてみましょう。
PTAや自治会の活動は立派なパラレルキャリアで、会社以外の世界を広げるチャンスです。
イベントの企画・運営を通して自分のやりたいことを実現したり、これまでのキャリアを活かしてリーダーとして頼られたり、さまざまなシーンで活躍の場があるはずです。
これらの活動をきっかけに人脈が広がる方もいるでしょう。
目の前の仕事に対する意識を変えるだけで、長い人生をかけた新しいチャレンジが始まるかもしれませんよ。